うちの工房で作る木のおもちゃには、仕上げに必ず蜜蝋ワックスを使っています。理由はシンプルで、小さな子どもが口に入れても安心な素材だから、そして何より木の質感をそのまま生かしてくれるから。ただ、お客さんから「家でどうお手入れすればいいの?」という質問をよくもらうので、今日はその方法をちゃんと書き残しておこうと思います(自分の備忘録も兼ねて)。正直に言うと、私もはじめのころは頻度も分量もよくわからなくて、塗りすぎてベタベタにしたり、逆に乾燥させすぎてひびを入れたりしました。そういう失敗も含めて、今わかっていることを書きます。

蜜蝋ワックスが木のおもちゃに向いている理由

蜜蝋ワックスは、ミツバチが巣を作るときに分泌する天然のワックスです。それ単体だと固すぎて塗りにくいので、一般的にはホホバオイルやオリーブオイル、スイートアーモンドオイルなどのキャリアオイルと混ぜてペースト状にしたものを使います。私の工房では蜜蝋とホホバオイルをおおよそ1対4の割合で合わせています(季節によって少し調整します。冬は蜜蝋をやや多めに)。この仕上げのいいところは、木の表面に膜を張るのではなく、木の繊維にじんわりと浸透して保護してくれる点です。ウレタン塗装のように表面をコーティングしてしまうと、木が呼吸できなくなるし、剥がれたときのリスクもある。蜜蝋ワックスは剥がれるというより、少しずつ摩耗して薄くなるイメージなので、継ぎ足しながら長く使えます。

お手入れが必要なタイミングをどう見極めるか

「何ヶ月に一回やればいいですか」とよく聞かれますが、正直これは環境と使い方によってかなり変わります。目安として私がお伝えしているのは、木のおもちゃの表面に水をひとしずく垂らしてみることです。水がぷるっと丸くはじくなら、まだワックスが残っています。水がすぐに染み込んでいくようなら、そろそろお手入れのサインです。もうひとつの目安は、触ったときの感触。新品のときのしっとりした手触りが消えて、なんとなくざらっと乾いた感じになってきたら補充どきです。うちの子どもが毎日使っているおもちゃは3〜4ヶ月に一度くらいのペースになっています。飾りに置いてあるようなものは年に一回で十分なこともあります。

必要な道具と材料の選び方

用意するものはシンプルです。蜜蝋ワックス(市販品でも手作りでも)、やわらかい布(古いコットンのTシャツをちぎったものが一番使いやすい)、乾拭き用のもう一枚の布、それだけです。市販の蜜蝋ワックスを選ぶときは、成分表示を確認してください。添加物が少ないほどいいです。天然成分だけで作られているものを選ぶと安心です(私はよく、養蜂家さんから直接蜜蝋を分けてもらって自分で作っています)。ワックスを塗る布はできるだけ毛羽立ちの少ないものがいいです。マイクロファイバーは塗るには向いていますが、古いコットンの方が木への馴染みがいい気がします。これは完全に主観ですが。

実際の手順、工程ごとに

まず、おもちゃの表面を乾いた布で軽く拭いてほこりや汚れを落とします。濡れていたら完全に乾燥させること(これ大事で、湿ったままワックスを塗るとカビの原因になります)。次に、指先か布の角にごく少量のワックスを取ります。本当に少量でいいです。「少ないかな」と思うくらいで始めて、足りなければ重ねる、という感覚で。木目に沿って、円を描くように薄く伸ばします。全体に塗り終わったら、5分から10分ほど置いて木に浸透させます。その後、清潔な乾いた布で余分なワックスを拭き取ります。この拭き取りが大事で、表面にワックスが残りすぎるとべたつきの原因になります。拭き取った後、さらに数時間は触らずに置いておくと、落ち着いてきます。

よくある失敗と、私がやってしまったこと

塗りすぎは一番多い失敗です。私も最初のころ、「多く塗ればより保護される」と思ってたっぷり塗っていました。結果は逆で、べたついておもちゃを触るたびに不快になってしまいました。ワックスは薄く何度も重ねる方が、厚く一度に塗るよりずっといいです。もうひとつ、直射日光の当たる場所に置いた直後にお手入れしようとして、木が熱くなっている状態でワックスを塗ったことがあります。ワックスが溶けて変な筋になりました。必ず木が常温に戻ってから作業してください。それから、食器洗い用の洗剤でおもちゃを洗うのはおすすめしません。ワックスがほとんど落ちてしまいます。汚れが気になるときは、固く絞った布で拭く程度にとどめておきましょう。

長く使うための日常の習慣

お手入れの頻度を下げるためにできる日常の習慣もあります。水に濡らしたままにしない、これが一番大事です。お風呂場やプールで使うのは木のおもちゃには向いていません(そういう環境用には、より耐水性の高い仕上げが必要です)。食べ物や飲み物が付いたときは早めに乾いた布で拭き取ること。直射日光の当たる場所に長時間置かないこと(日焼けと乾燥の原因になります)。こうした積み重ねが、ワックスを長持ちさせて、木のおもちゃをきれいに保つことにつながります。私の工房のおもちゃは、正しくお手入れしてもらえれば、何年も使えるように作っています。実際、7年前に買ってくれたお客さんから「まだ現役で使っています」と写真を送ってもらったことがあって、それがとてもうれしかった(そういう話が一番励みになります)。

お手入れは難しくないです。使うたびに少し気にかけるだけで、木のおもちゃはどんどん味が出て、家族の一部になっていきます。わからないことがあれば、工房に直接聞いてもらえれば答えます。これはまだ書き続けているノートなので、気づいたことがあれば随時更新していくつもりです。